健康トピックス
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肺に影があると言われた:胸部異常陰影
POINT
- 胸部レントゲン異常の精密検査としてまず行うのは胸部CT検査
- 胸部CTで肺がんを疑う場合、診断の方法として気管支鏡検査があるが、気管支鏡検査で診断が難しいことも少なくない
- 気管支鏡検査による診断が難しい場合は、CTで経過観察するか、外科切除に踏み切るか判断するのがとても難しいこともある
胸部レントゲンで異常を指摘されたら
健診などの胸のレントゲンで影があると言われたら、肺がんなど悪い病気ではないかと心配されるかもしれません。胸のレントゲンで異常を指摘された場合どのように検査をすすめていくのでしょうか?主に肺がん(疑い)の場合を例にご説明します。
胸部CT検査
まず行う精密検査は胸部CTです。専門医が胸部CTをみれば、スピキュラ、胸膜陥入、辺縁のすりガラス陰影などといった特徴的な画像所見から肺がんかどうかある程度判断できる場合があります。(肺がんが肺炎のような画像になったり、肺炎が肺がんのような画像になったりすることもあります。)また、肺結核、肺非結核抗酸菌症、間質性肺炎など肺がん以外の場合も特徴的な画像所見から診断をある程度推測できる場合もあります。
気管支鏡検査
CTで肺がんが疑われた場合にまず考慮する検査は気管支鏡検査です。気管支に管状のカメラ(内視鏡)を挿入し、病変部分を採取して診断をつける方法です。最近では気管支内超音波プローブおよびガイドシースを使うことにより検査の精度が向上し、超音波気管支鏡ガイド下針生検で気管支周囲のリンパ節病巣を採取することができるようになりました。しかし、それでも気管支鏡検査では診断がつけられない場合も少なくありません。気管支鏡検査では気管支を通して病変部分に到達するしかありませんが、病変部分に通じる気管支がない、病変部分に通じる気管支があってもその気管支に器具を挿入するのが困難、病変部分が小さすぎるなどの場合では検査が困難だからです。それでは気管支鏡での診断が難しい場合はどのようにするのでしょうか。
気管支鏡検査で診断がつかない場合
がんの可能性が比較的少ないと考えられる場合は、定期的なCT検査で病変が大きくなってこないかどうか経過観察する場合もあります。病変が増大してくる場合は、肺がんの可能性を考えて外科手術による切除などを考慮します。
気管支鏡検査が困難でありなおかつ肺がんの可能性が十分あると考えられる場合は、診断がついていなくても外科手術で切除を行う場合もあります。手術で切除することによって診断と同時に治療も行えるからです。
CTガイド下生検といって放射線画像を用いながら病変部分に針を刺して病巣を採取して調べる方法もあります。
気管支鏡検査による診断が難しい場合、CTで経過観察するか、あるいは外科手術による切除を行うか判断するのはとても難しいこともあります。例えば、診断がつかない病変を外科切除するということは手術の必要のない良性の病変に手術を行ってしまう場合もあるかもしれませんし、経過観察するとがんであった場合は治療が遅れてしまう場合もあるかもしれません。
診断が難しい場合は患者さまと担当医が十分話し合って方針を決めていくことが重要です。
咳がつづく:慢性咳そう
POINT
- 咳が続く場合、重要な原因のひとつは咳喘息
- 喘息を疑った場合の検査は呼吸機能検査、呼気一酸化窒素(NO)検査など
- 咳喘息の治療には吸入ステロイドが重要
慢性咳嗽の重要な原因のひとつは咳喘息
咳は持続期間により3週間未満の急性咳そう、3週間以上8週間未満の遷延性咳そう、8週間以上の慢性咳そうに分類されます。持続期間が短い咳は風邪などの感染症が原因のことが多く、持続期間が長い咳は感染症以外が原因のことが多いです。慢性咳そう原因として重要な病気のひとつが「咳喘息」です。頻度が高いということと、治療しなければ喘鳴を伴った(呼吸がゼーゼー、ヒューヒューする)典型的な喘息になることがあるからです。
咳喘息を疑った場合の検査
では、咳がつづく患者さまはどのように検査をすすめて行くのでしょうか?まずは、血液検査、胸部レントゲン、胸部CTなどで肺がん、肺結核などの重大な病気を除外することが重要です。このような検査で大きな異常所見がみつからない場合は、咳喘息の可能性も考えられるかもしれません。
喘息の可能性を調べる検査としては、呼吸機能検査、呼気一酸化窒素(呼気NO)検査があります。呼吸機能検査では気道可逆性試験といって、気管支拡張剤を吸入することで息をはけるスピードが改善する(1秒間にはき出せる空気の量「1秒量」が有意に増加する)のが特徴的な検査所見です。また、呼気NOは好酸球という血液細胞による気管支の炎症を反映するといわれており、呼気NOの上昇は喘息を疑わせる検査所見です。
咳喘息の診断には患者さまの症状も重要です。咳喘息では夜間から早朝に咳が強くなる、季節によって症状が変化する、痰がからまない乾いた咳がでる(痰がからむ場合も少なくありませんが)などが典型的です。
咳喘息の治療
検査所見や症状から咳喘息と考えられた場合は吸入ステロイドなどの治療を行うことがすすめられます。喘息は気管支の慢性炎症が病態とされており、吸入ステロイドで継続的に炎症を抑えることが重要と考えられています。
検査で喘息の根拠が十分でなかったとしても、喘息の可能性が否定できない場合は吸入ステロイド治療などを試しに行うことがあります。治療が効けば喘息の可能性が高いと考えられます。治療的診断と言われる方法です。
いびき、眠気:睡眠時無呼吸症候群
POINT
- 重要な原因のひとつは睡眠時無呼吸症候群で精密検査は終夜ポリグラフ検査
- 閉塞型睡眠時無呼吸症候群は交通事故や心臓血管系の病気のリスクと関連する
- 治療にはCPAP治療などがある
睡眠時無呼吸症候群
「いびきがひどい」「眠っているときに呼吸が止まっている」と言われたことのあるかたや日中の眠気がひどいかたは睡眠時無呼吸症候群の可能性が考えられるかもしれません。睡眠時無呼吸症候群は「睡眠中に呼吸が止まり、それによって日常生活にさまざまな障害を引き起こす疾患」です。多くの方が睡眠中に空気の通り道(気道)が閉塞することが原因の「閉塞型睡眠時無呼吸症候群」です。睡眠時無呼吸症候群は呼吸器内科でも対応することがある病気です。
終夜ポリグラフ検査
睡眠時無呼吸症候群の診断にもっとも重要な検査は「終夜ポリグラフ検査」です。一晩の睡眠中の状態(いびき、呼吸の乱れ、無呼吸、不整脈)を観察し記録する検査です。脳波や眼の動き、筋肉の緊張、呼吸、心電図、酸素飽和度(血中の酸素量)などを同時に記録します。この検査によって睡眠の深さや睡眠の質、睡眠中の呼吸の状態、けいれん発作、心臓の異常(不整脈)などを知ることができます。
また、この検査で測定される、無呼吸低呼吸指数(AHI)によって睡眠時無呼吸検査の重症度が分類されています。
AHI 重症度
5未満 正常
5~15 軽症
15~30 中等症
30以上 重症
閉塞型睡眠時無呼吸症候群のもたらす影響
閉塞型睡眠時無呼吸症候群のかたが自動車の運転を行うと、眠気、集中力の低下から交通事故のリスクが増加します。閉塞型睡眠時無呼吸症候群に関連した交通事故が社会問題として報道されるのもみかけます。
また、閉塞型睡眠時無呼吸症候群は心臓血管系の疾患の合併症が多いとされています。例えば、高血圧、糖尿病、心不全、脳梗塞のような病気です。逆に治療が難しい高血圧の原因として閉塞型睡眠時無呼吸症候群が見つかる場合もあります。
閉塞型睡眠時無呼吸症候群の治療
中心的な治療方法としてCPAP治療(持続陽圧呼吸療法)があります。就寝前に鼻に密着マスクを装着し、空気を送り込んで陽圧を保つことで、気道が閉塞しないようにする治療です。この治療により無呼吸をなくすことで、眠気などの症状が改善することが期待できます。CPAP装置の扱いに関しては、業者さまから説明、サポートを受けることができます。
その他の治療としてはマウスピース治療(口腔内装置)、手術治療などがあります。また、体重の減量、横向きに寝る、就寝前の飲酒を避けるなどの生活指導で改善が期待できる場合もあります。
当院での入院検査
当院では1泊入院での終夜ポリグラフ検査を行っております。検査当日の午後4時から4時半ごろに来院していただきます。(遅れる場合はご連絡ください。)なるべく普段の睡眠時間に合わせますが、20時半ごろから1時間ぐらい検査の準備に要します。通常は午前11時ごろ退院となりますが、翌朝の起床時間が検査終了となりますので、早く退院してそのまま仕事へ行くことも可能です。
検査前には入浴(シャワー)を済ませておいてください。また、電極がつきにくくなりますので、整髪剤(ムース等)の使用は避けてください。女性の方はお化粧やマニキュアは落としておいてください。検査のための食事制限等はありません。お薬を服用中の方は忘れずにお持ちください。
検査に痛みは伴いません。入院はできるだけ仕事に差し障りがないよう工夫をいたしますので、お気軽にご相談ください。